ラジオ
このところの大雪で、母は3,4日間自宅篭城を決め込んでセッセと自分の部屋の片づけを始めた。
いまだに片付いている気配はない(覗いていないからわからない)が、先日テーブルの上に小さな箱が置いてあったので「これ、何?」と聞くと、「ああ~、部屋を片付けていたら出てきたんだよ。ラジオだよ」と言う。
「使いたいの?」
「うん、テレビのつけっぱなしは電気量ももったいないから、ラジオでも聞いてようかなって思ってさ」
「じゃあ、電池入れておいてあげるね」
単4の乾電池を入れると音が出て、母はおもちゃをもらった子どものようにうれしそう
夜、店から戻って夕食時。
母が「ようこ、あのラジオ、電気コードがあるから乾電池は要らなかったんだよ。抜いておいておくれ」と言う。
「ふ~ん、そうなんだ。電気でつながるラジオなんだ」と不思議にも思わずに机の上のラジオの乾電池を抜いた。
翌朝、母が食事をしながら話し始める。
「あのね、きのう乾電池要らないって言ったでしょ?あれから自分の部屋にラジオを持っていって、さてコードをコンセントに入れようと思って、コードの先をたぐったら二またに分かれてるんだよ。『なんじゃ、こりゃ?』って思って、よ~く見たらイヤフォンだったよ」
わたし「・・・」
母「あははっ、最近のイヤフォンは二つ入れ口があるんだねぇ。ひとつだったらすぐにわかるけど、ふたつだったから『こりゃ、何するものだい?』って最初わからなくてねぇ。あははははっ!」
確かに母の時代のイヤフォンは片耳ひとつ。ふたつになったのはウォークマンが流行りだしてからのことだから、20年前ぐらいの話だ。
わたしたちの年代でさえハイテク機器を使いこなすことは至難の業なのに、ましてや母の時代ともなれば完璧にお手上げ状態。
ふと独居の高齢者のことが頭をよぎった。わたしがいなくては、母だって家電品を使いこなすのに一苦労なのだ。ひとり暮らしで昔ながらの家電品が壊れた時、今の家電システムを理解できる高齢者がどれぐらいいるんだろう。。。
家電品が揃っていてもコンビ二のお弁当に頼らざるを得ない高齢者もいる現実。家電品の便利さの裏で、確実に高齢者の戸惑いも増している。
「おやき」は信州のスローフードです。
「ふきっ子のお八起」HP→http://www.fukikko-oyaki.com/
関連記事